こんな気持ちでいられたら

ロートル病理医。地味な医者ですが、縁の下の力持ちでいられることに誇りを持っています。

仕事が少し落ち着く日には落ち着いて考え落ち着いて仕事する


 入梅後3日。ベランダはびしょびしょで霧雨が降ったり止んだり。バラやひまわりが雨滴に苦戦する中、紫陽花だけは意気軒昂で次々と大きな花を咲かせるようになってきた。クチナシと紫陽花がこの季節の主役だ。

 このところ目の回るような忙しさだったが、今日は小休止。こんな日は後回しにしていた仕事に手をつけることができる。忙しくていいことというのはあまりない。一つ一つの仕事の手を抜くということはあり得ないが、丁寧さはかける。病理診断だと、ただ単に診断と所見を記載して、「ハイ、おわり」となってしまい、その疾患に関する洞察や関連する論文検索などまでは手が回らない。

 病理診断は、

【診断】
   Lymph node, neck, biopsy
             Metastasis of adenocarcinoma
【所見】
  頸部リンパ節生検1個。顕微鏡的には、大型異型核を有する腫瘍細胞が不整癒合腺管を形成する像が認められます。腺癌の所見です。

 などという感じで報告する。この報告で悪いわけではないが、これでは、元々この人のどこかに既知の癌(大腸癌とか乳癌)があってのリンパ節転移なのか、原発不明癌だったとしてその原発巣がどこと推定されるものなのかなど全くわからない。余裕があれば、臨床医にもうちょっと調べてくれないかという二の矢が飛んでくる前に詳しく調べるが、忙しいとそのようなことをしない。癌の診断は癌かどうかだけということが多いものの、炎症性疾患が疑われる場合などはもっと大変なことになる。

 ちなみに、私のブログは回りくどいが、仕事としての病理診断は単刀直入に癌か癌でないかを書いて、その後(普段はこれよりももう少し長い)所見を書くので、ご安心ください。消化管生検の結果などでは臨床医も診断しか読まないことが多い。

 話は、今日のこと。少し余裕があるからといってもそれほど暇というわけではなく、通常の病理診断はあるし、来月のCPCの準備もある。事務仕事もあるし、病院に着いたら仕事の依頼メールがいくつか来ているに違いない。それでも、いつもよりは少し落ち着いているので、診断に難渋した症例についてもう少し調べて、鑑別診断などについて考察しよう。

 外国のジョークに、

イギリス人は走る前に考える。
フランス人は走りながら考えりる。
イタリア人は走ったあとに考える。

というのがある。病理医の仕事としては(走りながら診断しなくてはならない)迅速診断を除けば、走る(診断書をサインアウト)前に考えたいものだ。
人の一生を背負うということ

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