
NHKのニュースを見ていたら、がんに関する話題がいくつか取り上げられていた。
その一つが「国際小児がんデー」のこと。
小児がんとは、15歳未満のこどもに生じる悪性腫瘍のことで、白血病などの血液疾患のほか、脳腫瘍、副腎や生殖器などに生じる固形腫瘍などが含まれ、国内では年間およそ2,000人前後が罹患するとされている。
小学校一年生のときの友人が、休み時間に突然鼻血を流し、その後脳腫瘍と診断され亡くなったことを、今でも覚えている。
”ノーシュヨー”という言葉を初めて知った出来事だったが、それがどんなものか、具体的にはずっとわからないでいた。
国際小児がんデーは、小児がんについて広く知ってもらうための取り組みである。
大人であれば、自ら受診し、ある程度は治療方針を理解し選択することができる。
しかし子どもは違う。発症しても自分では何もできない。病気そのものを理解できない年齢の子もいる。だからこそ、親の負担は大きく、患者親子を社会全体で支えていく必要がある。
私は小児病理を専門として、何十年も診断に携わってきた。
いまでは、”ノーシュヨー”が”脳腫瘍”であり、それにはさまざまな腫瘍が含まれていることもわかる様になった。
小児がんも大人と同様、実に多様である。ただ、一つ一つの症例数は極めて少ない。一生のうちに一度出会うかどうかという腫瘍も少なくない。
多様でありながら希少という、ある意味矛盾した世界。
小児腫瘍科医は、その一例一例に応じた治療法を日々学び続けている。傍で見ていても頭が下がる思いである。
子どもは、大人よりも長く生きるべき存在であって、その時間を守ることは私たち大人の責任なのだと思う。
いっぽう、厚生労働省が2018年にがんと診断された人の5年生存率のまとめによると、15歳以上では膵臓がんや多発性骨髄腫、肺がんで生存率の向上が確認されたという。
とくに膵臓がんは難治性悪性腫瘍の代表格であり、私の同い年の友人も命を落としている。治療の進歩がある一方で、がんはいまだに身近で重い病であることに変わりはない。
がんとは、自分の体の一部が独自の生き方を選んでしまう病気で、完全に防ぐことは難しい。
基本的には腫瘍を取り除くしかないが、近年では分子標的薬や免疫療法など、腫瘍そのものを攻撃する治療も進歩している。
AIの進歩とも相俟って、診断も治療も大きく変貌していくだろう。
私たち小児病理に関わる病理医も、AI診断を駆使しながら、治療に役立つより良い診断を模索し続けたいと思う。