
悪いことをした。
二十センチはあろうかという大きなムカデを殺してしまったのだ。ムカデが悪いことをしたわけでないし、逃がしてやろうとすればそれもできたかもしなかったのだが、そうしなかった。それにたかだかムカデを一匹退治したところで、そこいら中、数十、数百匹といるはずなのでその一匹を駆除したところでどうということはない。ただ、ムカデはたまに靴の中に入り込んでいることがあって、そんな時には刺されて、ずいぶん痛い思いをするので”人間にとっては”害虫であって、駆除の対象とはなる。


もう何年も前から立性のローズマリーを鉢で育てているのだが、茎がひょろひょろ出ているのが不恰好で、以前から気になっていた。ローズマリーは少し地中深くに植えた方がいいということをテレビを見て知り、合わせて植えていた宿根草が枯れたということもあり、別の鉢で育てていた匍匐性のローズマリーを植えることにした。それぞれの木をひっくり返して土を作り直して植えるという、私にとってはまずまず大掛かりな作業となったが、考えていた通りにはなった。

その匍匐性のローズマリーの鉢をひっくり返したところで、鉢底にくだんの大ムカデが張り付いていた。逃げようとするムカデをシャベルの先で抑えて殺そうとしたのだが、なかなかそうはならない。哺乳類のように心臓をひと突きしたらそれで済むというわけにはいかず、最後には娘に殺虫剤をかけさせ、やっとのことで駆除できた。ただ、そうしてしまった後、よくよく考えてみると、鉢底でじっとのんびり過ごしていたムカデを、藪から棒に鉢をひっくり返し、見つけたとたん殺してしまうなどということをしてしまったわけで、大変申し訳ないことをしてしまったと思った。

人間というのは全く勝手なものだ。人間以外の動物は程度の差こそあれ不要で邪魔な存在だ。住む場所を手に入れるためには森を切り開き、動物を追い出す。人間が絶滅させた動物は歴史上数知れずいるが、それは食物連鎖とかそういうこととは関係がない次元でのことなのが、勝手だという理由だ。逆に言えば人間こそが全ての生物にとって不要な存在だ。そうしたら、人間以外の生物の中には生存をかけて人間を襲うことになってしまうものが出てきてもおかしくない。新型コロナウイルス(COVID-19) にしても、以前から別の動物にでもくっついてのんびりやっていたのが、何らかの形で人間につつかれたせいで、人間に感染し、変異して生き延びようとするようになってしまった。結局のところ、人間自身がこの未曾有の感染症を引き起こしたのだと、大ムカデのことを思い出しながら考えてしまう。
人間の都合
